昭和:対人関係論10/11 Pronin et al.(2002).
昨年度の対人関係論は授業記録を怠っていたのですが、今年度は再び頑張って継続したいと思います。
本日紹介したのは、以下の論文です。この論文は、様々な認知バイアスについて自分は他者よりも生じにくいと考えることを示しています。この傾向を指して"bias blind spot"と呼んでいます。
Pronin, E., Lin, D. Y., & Ross, L. (2002). The bias blind spot: Perceptions of bias in self versus others. Personality and Social Psychology Bulletin, 28, 369-381.
研究1は3つの研究からなります。変な感じがするかもしれませんが、ほぼ同一の手続きを用いて、サンプルを換えたり、一部の手続きのみを変えたりした場合、同一の研究としてまとめることがあります。研究1では"bias blind spot"の存在を示そうとしていますが、様々なサンプル(実験参加者)で生じることを示したり、様々な認知バイアスで生じることを示したり、比較対象を具体化しても(平均的アメリカ人から同クラスの学生、同じロビーにいる他の乗客)生じることを示したりしています。
その意味で、研究Ⅰは現象の一般性を確認したと言ってもいいでしょう。しかし、研究1の成果はそれだけではなく、"bias blind spot"が望ましくないバイアスで生じやすいこと、さらには自覚しづらいバイアスで生じやすいことを示しています。特に後者は、内観の非対称性に関わる貴重なデータになります。ゆがめたという意図の痕跡がなければ、自分の認識は歪んでいないと考えている可能性を示唆するからです。
研究2、研究3は、それぞれ平均以上効果と自己奉仕バイアスを題材にしていますが、基本的に同一パラダイムです。つまり、(1)認知バイアスを生じさせた後、(2)そのバイアスの存在を指摘し、(3)バイアスの生じやすさを回答させる、という手順を踏んできます。バイアスの結果を指摘した後でも、自分の認識は歪んでいないと考えていること(研究2)、協働している他者よりも自分にはバイアスが生じないと考えること(研究3)が示されています。
これらの結果について、人は自分について都合良く考えたいのだ、とか、自分が歪んでいることを分かっているが認めたくないのだ、とかいったプロセスを考えるかもしれません。しかし、これらの現象に携わる研究者はそうではなくて、自分にこういった認知バイアスが生じていることに本当に気づいていないのだ、と考えています。この点については、次週以降検討したいと思います。
一見無関連に思えますが、今回の論文と関連する研究に次のものがあります。自分は他者よりも良心的なのだ、と考えてしまう現象について扱っています。興味のある方はご一読下さい。
Epley, N., & Dunning, D. (2000). Feeling "holier than thou": Are self-serving assessments produced by errors in self- or social prediction? Journal of Personality and Social Psychology, 79, 861–875.
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